「将来は設計の仕事がしたい」という希望から始まった実習先探し。
小さなきっかけがいくつか重なって選んだ10日間のインターンシップでは、スムーズな生産を支える「工場の頭脳」とも言える技術部隊の仕事を体験しました。

実習に参加した学生さん

理工学域 機械工学類 3年
☞memo ダイカストとは?
溶かしたアルミニウムなどの金属を、金型に高速・高圧力で注入して成形する鋳造技術。圧力をかけて注入するため、薄く複雑な形状の製品を大量生産できます。
美濃工業㈱では、厚さが1㎜以下(!)というごく薄い部品も生産されており、自動車部品等の軽量化に貢献しています。

大学のある金沢から5時間かけて実習先の中津川へ
インターンシップに行こうと思った理由としては、まず「大学で単位が取得できるから」ということが最初にありました。もともと福井県で高専に通っていて、そこでも機械系企業でのインターンシップを経験しました。その時にとても楽しくてためになったと感じていたことから、「行っておいたら自分のためになるし、行こう」と決めました。
ナビサイトで検索して、比較的近場で、10日間の実習が可能で、機械系の体験ができて…というような条件で探していきました。美濃工業さんはアルミダイカストで自動車部品を生産されていますが、「ダイカスト」という言葉は高専でも大学でも座学ではいろいろ聞くものの、学内で実習の中で体験できるものではないため、良い機会だなと思いました。
機械工学を学んでいるので、選択項目の中で「製造」や「自動車」といった言葉を選んで探したのですが、ヒットするのは東京や横浜などが多くて。それに比べれば近いかなという感じです。金沢から車で高速を使わず、片道5時間くらいで到着しました。運転も好きなので楽しかったです。
それから、インターンシップの応募時にはエントリーシートの記入を求める企業が多いのですが、できれば避けたいなと感じていて。美濃工業さんは「履歴書の提出」と書かれていたため、そこも決め手の一つになりました。
そうですね。1部屋を2週間お借りしました。宿泊費用を企業側で持っていただけると、とてもありがたいですね。
「技術部」と「生産技術部」とを1週間ずつ体験
僕の場合は、「将来は設計の仕事がしたい」という希望を伝えたところ、技術部と生産技術部での実習を提案していただきました。
最初の1週間が技術部で、ダイカストの金型を主に扱う部署でした。CADやCAEと呼ばれる解析ソフトを使って、金型の中で溶けた金属がどのように動くのかを解析したりします。解析することで、どこで欠陥が生じるかを調べ、金属が流れにくい部分はどのように改善していくかを考えるわけです。それから、実際にできた製品をスキャナで表面や内部を分析して、どのように欠陥が生じているのかを突き止めるような業務も体験しました。
後半の1週間は生産技術部です。こちらはダイカストで作られた製品の、表面をきれいにしたり寸法に合うようにゆがみを直したりといった工程を考えて、設計する部署です。例えば、実際に加工ラインで使われている産業用の大きなロボットを、自分でプログラムを作って動かしてみたりしました。
実習期間:2025年8月25日(月)~9月5日(金) 10日間/8:05~17:10
| 日にち | 実習場所 | 実習の内容(抜粋) |
|---|---|---|
| 1日目 | 坂本工場/本社工場 | 会社概況説明・安全衛生教育・5Sについて・工場見学 |
| 2~5日目 | 坂本工場 | 【技術部】ダイカスト基礎知識の教育、3D-CADを用いた金型設計、流動解析ソフトによる湯※2流れ検討 等 |
| 6~9日目 | 同 | 【生産技術部】3Dスキャナの使用、シーケンサーによる回路プログラムの作成 等 |
| 10日目 | 同 | 成果報告会 等 |
※「湯」または「溶湯」…溶けた金属のこと。




設計をしたいというのが一番の希望でしたので、製造部の体験は外すことになりました。
実習は主に坂本工場で行ったのですが、初日は本社工場も見学しました。工場を見学した時に一番驚いたのは、製品のでき上がるスピードです。ダイカストは金型に溶けた金属を圧入して製造するのですが、一つの部品ができ上がるのがほんの数秒で。金属は当然熱いので、もっと冷却に時間がかかるのかなと思っていました。
基本的に工場内の作業は自動化されていて、検査をする社員さんだけがいる状況です。それを見て、これからの時代は、今回僕が体験した設計や解析の部門の重要性が高くなるんだろうなということと、会社としてはそちらに人員を割いていくんだなということを感じることもできました。
つまり、決められたことをやるだけの人材ではなくて、製品の流れや生産工程をデザインできる人材が必要とされるようになる、ということですよね。
では、実習の中で特に印象に残っていることはありますか?
生産技術部ではプログラムを中心に体験させていただいたのですが、でき上がった製品の品質を管理するアプリケーションや、実際に製品を作る時の、例えば温度や圧力のデータを集めるアプリケーション等も生産技術部の中で開発しているということを聞き、大学で学んでいる専門分野ではないのですが、アプリケーションの開発にもちょっと興味がわきました。今回の実習で作ったりすることはありませんでしたが、将来、こういう仕事も面白そうだなと感じました。

機械工学でもプログラムは学びますが、アプリケーションはどちらかというと、電気とか電子情報の分野だろうと思います。
自分は何を作りたいのか、そのためにどんな職場を目指すのか
全体を通して、自分ではどんなことが学べたなと感じていますか?
まずインターンシップに参加した目的として、自分が将来どのような職業に就きたいのか、そしてどんな道を進みたいのかを決めるために、改めて自分を見つめ直したかった、ということがありました。そして、インターンシップを通して、自分に何か新たな学びや発見があると良いなと考えていました。
美濃工業さんでは主に金型の設計や加工工程の設計をしていて、加工するための機械本体の設計は別の会社が請け負っています。さらに、金型で生産する製品自体の設計は、発注元である自動車部品の会社が行っています。つまり同じ「設計」でも、何が作りたいのか、何を設計したいのかということを今よりも細分化して、その上で自分が就職したい会社を考えていく必要があるんだな、ということを感じました。
それから、部長クラスの方や、まだ入社して1、2年目の方などいろいろな社員さんと話す機会を作っていただきました。その中で、「例えば仕事の中で、製品を作るにあたっても予め自分で予測を立てて、出た結果をそれと比較して、なぜこういう結果になったのか、自分のやり方が影響したのかそれとも機械の体制が原因か、きちんと見極める」というお話がありました。話してくださった方からは、自分の考えをきちんと持って動いていらっしゃる様子がすごく伝わってきたので、自分でも、自分なりの考えをしっかりと持って仕事をすることや、今だったら、普段の授業を受けるにしても意識的に取り組むのが大事なんだなと思いました。
そうですね。かなり達成できたと思います。
ちなみに、先輩とのお話については、座談会のような時間があったのですか?
年齢が近い先輩社員さんとは、そういう時間を設けていただきました。
部長さん方については、インターンシップの終盤に、実習部署について感想を話す時間を作っていただいたり、最終日にはパワーポイントも使って、今回の実習の成果をまとめて報告する会がありました。15人くらいを前に発表したのですが、ほぼ全員からフィードバックをいただくことができ、その時間が本当に有意義でした。

コメントをもらえるのはありがたいですね!
ちなみに、参加前に準備したことはありましたか?
事前にホームぺージをチェックしました。それから、どこに集合するかを確認して、分からない部分はメールで問い合わせたりしました。
夏休み前のオープン・カンパニーなどは、日程が合わなくて参加していません。
インターンシップの業務については特になかったのですが、どちらかというと社員寮で生活をするので食事面ですね。それから、僕の場合は現地でタオルを追加で購入することになりました。「家具家電付き」とのことでしたが、泊まる場所がどんな感じか、何がどこまで準備されているのかといった点は、もうちょっと詳しく聞いておいた方が良かったかな、と思いました。

寝具類も完備されているそうですよ。
2週間だと実習時の服装も生活用品もそれなりに必要ですからね。そこは早めに確認して準備をするほうが良さそうですね。スーツケースで運ぶのもなかなか大変ですから、場合によっては、宅配便等で送るのはアリなのか、といったことを実習先の担当者さんに確認しても良いかもしれません。
2週間しかいないので、調味料を購入しても使いきれないだろうな、と思ってしまって。朝と夜については、近くのスーパーでうどんやパンを買ったりして何とか乗り切りました。
お昼は社食だったのですか?
はい。ご提供いただいたのですが、毎週金曜日が「唐揚げの日」で。それが特に美味しかったです。
ご飯も大盛りにしていただけたりしたのでありがたかったです。


学部を卒業した後に大学院に進学したいと考えているので、就職するとしたら修士の後になると思います。今回インターンシップに参加したことで、「何を作りたいのか」によっても選ぶべき会社が変わってくることがよく分かりました。それに、「アプリケーションの開発」にも新しく興味を持つことができたので、その辺りも含めて、どんな企業に就職するのか、自分の中でよく考えていきたいと思っています。
大学では卒業研究も始まってくるので、その中で今回学んだ、企業の人の「仕事の進め方」を活かしたいと思っています。社員の方々は「どんな欠陥が予測されるのか」や「生産や後加工に必要となる期間を考えると、開発はどの時期までに終わらせるべきか」といったように、事前に課題点を洗い出した上でスケジュールを決めていました。そういう管理面だったり、実習中にお聞きしたこと、仕事に対する向き合い方等も自分でしっかりと吸収して、今回インプットできたものをアウトプットできるように、意識的に行動していかないといけないな、と思っています。
美濃工業さんはフレンドリーというのか、基本的に和やかで。もちろん製造現場の緊張感はありますし、仕事に対する熱量もすごいのですが、学校と比べて大きく雰囲気が異なる、というわけではなかったです。
インターンシップの行き先以上に「行った先でどう関わるか」を大事にしたい
では、これからインターンシップに参加する学生さんへのメッセージやアドバイスもお願いします。
僕がインターンシップに参加する目的として、企業の雰囲気を知るとか、その企業がどういう仕事をしているかはもちろん重要なのですが、それ以上に、その企業で働いている社員さんの考えを知って、それを自分にどう取り入れていくのか、ということを大事にしていました。社員さんから聞いたことはもう一度思い返してみて、自分なりに気付けることが他にもないか考えてみたりもして。気付く回数が増えるほど、自分の選択肢や考えも更新されていくんだなというのを今回強く感じたので、そういう方向に重きを置いて、インターンシップに挑むのも良いのかなと思います。
もちろんインターンシップ先を選ぶことも大事で、そしてせっかく行くなら、自分の学科や専攻に合った先を選んだ方が良いだろうとも思うのですが、行き先以上に、行った先でどう関わるかを大事にすると良いんじゃないかなと思います。
北川さんご自身は、社員さんへの接し方などで気を付けたことはありましたか?
そうですね…社員の方が言われたことはしっかりメモをとって、後から見返せるようにするとか、ちゃんと自分から質問をすることですね。その前に、まず質問することを見つけること。
業務上の用語とか、操作などは難しかったですか?
ロボットを動かすことは高専の時に経験がありましたし、CADも学校の授業ではあまり使いませんが、個人的に3Dも2Dもさわったことがあったので、そこはスムーズだったかなと思います。
ちなみに、今年の夏休みは他の実習先にも行かれたのですか?
今年の夏はサークルの関係であまり日程を空けられなかったので、他の実習には行っていません。ただ、記録の残し方やスケジュールの考え方、そして社内で制作されるアプリなど、今回の実習で学んだいろいろなことがサークル運営の参考になりそうだなと感じています。
「鳥人間」です。僕は設計を担当しています。
最後に、美濃工業㈱の皆さんへのメッセージもお願いします。
今回、実習を通じていろいろな社員さんのお話を聞かせていただき、本当に行って良かったと感じています。今後もぜひインターンシップを続けていただきたいです。僕も毎日いろいろな業務を体験させていただけて、とても良かったです。特に最終日の報告会と、社員の皆さんからのコメントをいただける時間はぜひ残していただきたいです。
僕はこれ以上短いと物足りないなと思いました。インターンシップですし、学生によって実習期間も違うので仕方がないのですが、もうちょっと長くても良いくらいかなと思いました。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
丁寧に説明していただけて、とても分かりやすかったです!

美濃工業株式会社 総務部人事課 林さんからのコメント
この度は当社のインターンシップにご参加いただきありがとうございました!
インターンシップ参加中の土曜日に社内の運動会である「ミノリンピック」がちょうど開催されたのですが、
任意参加のイベントにも関わらず二つ返事でこのイベントにも参加してくれました。
業務だけでなく、美濃工業の雰囲気なども体感していただけたのではないかと思います。
今回の経験が、進路を決めていく上で少しでも北川さんのお役に立てていただけるのであれば幸いです。
北川さんのおかげで、私たちも新たな気付きを得ることができました。ありがとうございました。
このような長期のインターンシップだけでなく30分~1時間のオープン・カンパニーや、
オープン・カンパニー参加者限定の”1dayプログラム”などもございますので
メーカーに興味がある、地元で就職したいと考えている方は、ぜひ当社のページを覗いてみてください!
皆さまのご参加をお待ちしております^^

