成果報告

最先端プラスチック素材でつくる新商品を提案せよ!――地元モノづくり企業での挑戦

  • 学生の体験談
掲載日:2023/09/29
2023年度掲載

岐阜駅前の「大岐阜ビル」に本社を構える、文字通り「地元の企業」で体験したのは、軽量化や省資源・高強度を追求した“ハニカムコア材”を使った開発工程。グループで持てるスキルや知恵を出し合って新商品を考えました。

事業内容:プラスチック製の産業資材、工業部品、医療用部品の製造販売および日用雑貨品、水道管継手の製造
本社所在地:岐阜市神田町9丁目27番地(大岐阜ビル)

リスのプラスチックグループwebサイトより。”プラスチック”を軸に幅広い製品の開発・製造を行っている。

実習に参加した学生さん

名古屋工業大学

工学部 生命・応用化学科 3年
H.K.さん

始まりは「地元の企業で働きたい」という気持ち

インターンシップに参加しようと思ったきっかけや、実習先を岐阜プラスチック工業㈱に決めた理由を教えてください。

 3年生になって「いよいよ就活が始まった」という気持ちでしたが、まだ自分の中で“この仕事をしたい”というはっきりとした希望はありませんでした。最初は何となく、大学の先輩たちが就職していっている、メーカーの技術職などに進むのかなというイメージがあったのですが、自分がメーカーで働きたいのか、その中でも商品開発をしたいのか技術職に就きたいのかが分からない部分がありました。
 そこで、夏休みに一度、メーカー、そして開発職の仕事を自分の目で見てみることで、自分がどういう仕事に興味があって、何を大切にして就職活動を進めていきたいのかを考えたいと思い、参加することにしました。

 地元で働きたいという想いもあり、学校で先生から「地元で材料系のメーカーを探すなら、こういうところもあるよ」と岐阜プラスチック工業㈱を紹介してもらったのが直接のきっかけになりました。

普段はどんな勉強をしているのですか?

 学校ではセラミックスの勉強をしています。いわゆる「材料系」で、焼き物から始まった技術がいろいろなものに応用されているイメージです。今回選んだのはプラスチックのメーカーということで、専門そのものではないのですが、学科が「化学科」ではあるので、何となく関連はあるかなと思います。

実習前に何か準備したことはありますか?

 事前に「テクセル」という商品を使って開発体験をするということが知らされていたので、企業のホームページを見て、どんな製品なのかをチェックしました。
 あとは、集合場所がJR岐阜駅前の本社ということだったのですが、当日場所がすぐに分かるか不安だったので、実際に現地を見に行ったりしました。

岐阜プラスチック工業㈱本社が入る「大岐阜ビル」。JR岐阜駅のすぐ北側に建っている。
実習の詳しいスケジュールについて教えてください。
実習日程:2023年8月18日(金)~8月23日(水)/5日間
100017:001日目のみ130017:00
1日目本社・オリエンテーション
・商品開発コンセプト、グループワーク
2日目テクセル事業部
(大野町)
・テクセル事業部とショールームの見学
・グループワーク(設計)
・中間発表
3日目・グループワーク(設計)
・図面引渡し
4日目・グループワーク(加工、資料)
5日目・グループワーク(加工、資料)
・最終発表
・先輩社員座談会
実際に参加して戸惑ったことなどはありましたか?

 実習前にグループワークをするとは知らされていたのですが、詳しくは聞いておらず、実際に参加してみたら設計をする、図面を書くということになりました。今まで授業でやったことがなかったので、少し不安はありました。
 図面は手書きで作ることになり、最初はどうしようかと思ったのですが、3人で作ったグループの中に設計をやったことがある学生がいて、教えてもらうことができました。社員さんのサポートもあって、何とか仕上げることができました。

新商品として、どんなものを制作されたのですか?

 私たちのグループは赤ちゃんのベッドを制作しました。最初は赤ちゃんのベッドとして使い、将来はクローゼットとして使えるようなものを考えました。
 テクセルの吸音の機能を活かして、赤ちゃんの泣き声を吸収することや、周りの音を遮って赤ちゃんが眠りやすくすることを狙いました。おむつ替えがしやすいように、枠の一部が外れるようになっています。  軽くて持ち運びしやすいですし、加工もしやすい素材だと感じました。

グループワーク(設計)の様子(写真提供:岐阜プラスチック工業㈱)
ここでワンポイント♪ テクセル(TECCELL)とは?

 今回課題となったこの素材は、熱で形が変えられる樹脂で“無数に連続した正六角形のセル(小部屋)の集合体”(=ハチの巣に似ていることから「ハニカム構造」と呼ぶ)を作り、さらに2枚の板でサンドイッチしたもの。軽量化や省資源化を叶えられる素材で、断熱性や衝撃吸収効果に優れているほか、表面に穴を開けると吸音効果も期待できます。

 2009年に開発されてから航空宇宙産業を中心とする先端産業分野で使われてきましたが、最近では騒音対策や、オフィスに置けるリモートブース等にも役立てられています。

リスのプラスチックグループwebサイトより。写真は吸音性に優れたTECCELL SAINT。
「ベビー用ベッド テクてく」

 H.K.さんのグループが考えたのがこの商品。赤ちゃんの頭部を守る日除けがついているほか、ベビー用品が収納できるボックスもセットで制作しました。
 他の2グループが制作したのは「持ち運び犬用ゲージ ミニチュアテックス」、「避難所用簡易ベッド パッとサッとスッとベッド」。それぞれターゲットや用途の異なる新商品を提案しました。それぞれの写真や詳細は、「リスのプラスチックグループ 新卒採用」のInstagramでも紹介されています。(@risuplastic.recruit_official

自分たちで設計したとはいえ、設計図の二次元をもとに、三次元に変換・加工するのは難しかったですか?

 私たちでは知識が足りない部分も多かったので、そこは加工担当の社員さん等にサポートしてもらいました。図面も、自分たちなりに細かいところまで書いたつもりだったのですが、それで本当に思っていた形になるのか、でき上がるまでは結構不安でした。工場の方が「ここはどういう風にしたい?」と細かく聞いてくださり、思い通りの形に仕上がったのが嬉しかったです。機械操作もできるところはやらせてもらいました。

仕事を進める上で、“軸”を決めて取り組む大切さ

プログラムの中で一番印象に残っているのはどんなことですか?

商品開発のグループワークということで、アイデア出しから設計、加工、さらに商品を売り込むためのプレゼンまで、社員さんの協力も得ながらも、すべてを自分たちだけで作り上げたことです。

社員さんからの言葉で記憶に残っていることはありますか?

 2日目のアイデア出しではたくさんの案が出たのですが、そこから一つの商品にしぼっていこうとしたところ、ターゲットや用途が3人の中で明確になっておらず、うまくまとまりませんでした。
 その時に社員さんから「自分たちが一番大切にしたいことは何かを明確にすると、商品もしぼりやすいし、グループワークが進めやすくなると思うよ」とアドバイスをいただきました。そこで、自分たちはどうしたいかをしっかり話し合ったところ、商品も決まり、グループワークもスムーズに進むようになりました。

グループワークの様子(写真提供:岐阜プラスチック工業㈱)
なるほど、「軸」を決めるということですね。
仕事の軸を決めるというのは、どんな仕事にも通用しそうですね。
5日間参加して、自分が学べたなと感じていることについて教えてください。

 まず、商品開発の仕事について自分の目で確かめることで、一通りの流れを知ることができました。最初は自分が何をしたいか良く分からなかったのですが、実習を体験したことで、自分が思っていた以上にモノづくりに興味があるんだということが分かりました。
 また、就職後はモノづくりに携わる仕事がしたいなと感じることができたのが、一番の学びだなと感じています。

意外とメーカーは面白いぞ、と感じたわけですね。
終わってから、もっとこうしておけば良かった!と感じたことはありますか?

 5~6月頃に開催される説明会などに参加せずに申し込んだので、もう少し企業の情報を事前に深く調べておけば良かったなと思いました。
 1日目に質問タイムも設けていただいたのですが、すぐには質問が思い浮かびませんでした。担当者の方の顔を見ながら直接説明が聞ける合同説明会は、オンラインでも良いので参加しておけば良かったなと思います。

説明会に参加すると、ホームページには登場しない情報が飛び出したりしますからね。
今後に向けての課題は見つかりましたか?

 今後、自分が興味のある仕事は何だろうとか、就職活動を進めていく中で、自分が一番大事にしたいことは何だろうということを考えながら進めていきたいです。
 今は幅広い視野で企業研究を進めているのですが、企業説明会に参加したり、秋から春にかけてのオープン・カンパニーや仕事体験のプログラム等にも参加して、希望する企業をしぼっていきたいなと思っています。

ちなみに、理系学部にいらっしゃるわけですが、就職活動への意識は皆さんいかがですか?

 周りは大学院に進む人も多く就活をしている学生は少ないのですが、3年生に入ると就活の意識が高まっている印象ですね。3年生の前期までは授業も多いですが、後期は授業が少し減るので、企業研究が進められると思います。研究室に分かれるのは4年生からなので、早めに決められると良いなという気持ちもあります。

“意外と好きかもしれない”が見つかるかもしれない楽しさ

これからインターンシップに参加したいと考える学生さんへのメッセージがあればお願いします。

 最初は幅広い視野でもって、イベントなどに参加してみるのが良いと思います。私自身もそうなんですが、パッと見て、自分が興味のある分野じゃないと感じる業界や企業でも、“意外と好きかもしれない”と感じるものが見つかるかもしれないので、まずは参加してみることが大切だと思います。

グループワーク(加工)の様子
(写真提供:岐阜プラスチック工業㈱)
ちなみに実習に行く前、「企業の人」というのは、“怖いんじゃないか”といったイメージはありましたか?

 正直なところ、やはり厳しいイメージはありましたので、緊張しました。でも実際は皆さんとても優しくて、5日間を楽しむことができました。
 関わってくださった社員さんは社内のごく一部だったとは思うのですが、割とアットホームな雰囲気で、若手の方も多く活躍されている印象を受けたので、良い雰囲気の中で仕事をされているんだなと感じました。

 実は最初、商品開発の仕事は“商品開発担当の人だけでやっているイメージ”だったのですが、設計や加工など様々な部門の方との関わりの中で、一つの商品ができていくことがよく分かりました。モノづくりへの興味がわいてきて、今は私も誰かの手に届く商品、誰かの役に立つ商品を作りたいという気持ちが出てきています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!
紅谷さん

岐阜プラスチック工業株式会社 総務部 紅谷さんからのコメント
 この度は5日間の対面インターンシップにご参加いただきまして、ありがとうございます!
 コロナ禍の落ち着き具合を見ながら、今年は3年ぶりの対面開催となりました。
 やっぱり対面での企画はいいですね。インターンシップ参加者皆さんの真剣さや喜びが直に伝わってきますし、それだけモノづくりの面白さを感じてもらえているなと感じ取ることができました。

  今回の<商品開発コース>では、モノづくりに興味がある方を対象に5日間のグループワークを通して、商品の構想、設計、加工、プレゼンを行っていただきました。主体性を持つことの大切さや、協力する姿勢、役割分担をすることで時間を有効的に使うことなど、ほかにも多くのことを学んでいただけたのではないでしょうか。
 今回皆さんが吸収したことを、就職活動に限らず今後に生かしていただければ嬉しいです。

 最後になりますが、これから控えている就職活動で抱くであろう不安や苦労を乗り越えて、社会人としてのスタートを切れるように私たちも応援しています!