成果報告

2daysオンラインの冒頭に半日の対面日程をプラス!今までより“濃い”仕事体験へ

  • 受入事業所事例紹介
掲載日:2022/12/09
2022年度掲載

 コロナ禍により対面開催の実習が開催しづらくなり、取り入れられた「オンライン開催」は、いまやスタンダードになりつつあります。
 令和4年度、企業と学生の繋がりをこれまで以上に意識して、オンライン日程に対面日程3時間を追加した、いわゆる“ハイブリッド開催”で受け入れを行った際の状況について、成果と今後への課題をお聞きしました。

事業内容:コンピューターシステム開発、ITネットワーク構築等
本社所在地:大垣市加賀野4丁目1番地の9

☞今回は、インターンシップや採用などの人事部門を担当されている経営企画部 課長代理の武藤様にお話を伺いました。

コロナ禍前までは普通に実施していた“対面開催” 「何とか復活させられないか」

まずは令和4年度夏季の“プラスワン2days仕事体験インターンシップ」の特徴、スケジュールを教えてください。

 当社では、新型コロナウイルス感染拡大前に、対面でのインターンシップを行ってきましたが、令和2年度からは、オンラインに切り替えて1day業界研究や2days仕事体験を行ってきました。

 コロナ禍3年目となる令和4年度は、それまで開催していたオンラインの2days仕事体験をベースに、「プラスワン」として、1日目に3時間だけ、本社で対面にて開催する日程を追加したコースを新設しました。これが、プラスワン2days仕事体験インターンシップです。

 この「プラスワン」コースは、対面開催である1日目に、実際に職場を見学してもらったり、当社で手掛けているAI、IoT技術を体感してもらうなど、会社に訪問したからこそ味わえるという内容で、普通の2dayインターンシップと区別してより特別感を出しています。

AI・IoT機器の体験(プラスワンBコース)
※写真提供:すべて共立コンピューターサービス㈱
【プラスワンAコース】システム開発体験
1日目
14:00~17:00
(対面開催)
①IT業界の説明、事業概要、職場見学
②先輩社員による新技術サービス開始秘話&体温検知システムの実体験
③質疑応答
2~3日目
10:00~17:00
(オンライン開催)
①ワークショップ「システム開発を体験しよう」
・自社製品・サービスを知る
・システム開発体験(Office-PRISMを使った開発工程体験)
・システム開発体験(要件の定義)
(個人ワーク、グループワーク、グループディスカッション、発表)
②先輩社員とのグループディスカッション
【プラスワンBコース】マーケティング・新技術体験
1日目
14:00~17:00
(対面開催)
①IT業界の説明、事業概要、職場見学
②AI・IoT体験
③質疑応答
2~3日目
10:00~17:00
(オンライン開催)
①ワークショップ「AI・IoT体験&マーケティング(分析ツールの活用)を体験しよう」
・新技術紹介(IoT、センサーの仕組みや種類、当社活用事例 等)
・マーケティング(分析ツールの活用)体験
(個人ワーク、グループワーク、グループディスカッション、発表)
②先輩社員とのグループディスカッション
今回ハイブリッドで開催されたきっかけや理由を教えてください。

 コロナ禍以前、インターンシップはずっと対面開催で行ってきました。
 2年前に急遽オンラインでできることを…ということで模索しながら実施してきましたが、学生さんの熱量や反応を直接感じたいという想いがあり、新型コロナの状況も見ながら、何とか対面開催を復活させられないかと考えていました。

 一方で、この2年間オンラインで開催してみて、学生さんが使い慣れたPCを使って参加できるというメリットも実感しています。しかし、未だに「食事の時間を組み込むことが難しい」といった制約はなくなっていません。そこで、オンラインと対面の良いところどりをして、ハイブリッドで企画してみよう、ということになりました。

 インターンシップを実施する企業の人事担当の方は、このようなイベントを通じて「当社を知って就活の参考にしてもらいたい」、そして、会社への就職、定着を考えていると思います。 その目的に合った相性の良い学生さんとどう出会うか、どう繋がるか。当社の場合は、対面日程を組み込むことで、“通える距離”に居住していらっしゃる学生さんと出会えるのではないかと考えました。

フォルムも印象的な本社ビル

「現場に任せる」だけでは実習は成り立たない

実習について工夫した部分や苦労した点なども教えてください。

 今回、1日目(=プラスワン)の対面日程では、職場見学ツアーをしたり、当社で一番大きな会議室を確保し、人の顔を認識するセンサーや体温検知システムなどを体験してもらいました。特に“ここでしか味わえない体験”を意識したコンテンツを用意しました。
 また、学生さん同士や指導役の社員がFace to Faceでお互いに親交を深めた上で、翌日からのオンライン実習に突入できるような自己紹介&懇談も行いました。

 ちなみに、当社のインターンシップでは、人事担当だけでなく、現場の社員が指導役として参加します。むしろ、先輩社員がメインとなるよう設計しています。
 今回の「プラスワン」コースを計画する際には、オンライン2daysインターンシップをベースとしたのですが、1日目=プラスワンで増やした約3時間分のプログラム設計にあたっては、実は少し苦労しました。

 最初、その約3時間分については、単純に「元々の“仕事体験”の時間を増やしたらどうか」と、指導役の社員にプログラムの追加をお願いしました。 しかし、これ以上に内容や時間を増やすのは難しい、と断られてしまったのです。その時は、一瞬“お先真っ暗”という気分になりました。

ちなみに、インターンシップではどのような部署の方が対応してくださっているのでしょうか。

 当社のITソリューション本部の2年目から9年目くらいの社員に依頼しています。
 コロナ禍で、急遽オンラインへの変更が必要となったとき、学生が満足するプログラムを提供できないと悩んでいたところ、現場の社員が一緒に考えてくれました。(巻き込んだと言ったほうが正しいかもしれません)

 「こんなこともできるんじゃない? あれもいいんじゃない?」と次々にアイディアを出してくれ、社内で協力体制が作れたおかげで、今の2daysインターンシップがあります。それなのに今回、時間を増やすことで現場の負担も増やしてしまうことはあまり考えず、安易に依頼してしまったのです。そのことは反省し、現場に任せっきりにするのではなく、一緒に取り組むことを意識しながら、こちらからも新たな案を提示していくことで「プラスワン」が実施できることになりました。

 この”新たな案”とは、ワーク最後に行う発表の難易度を上げたことです。 「プラスワン」だけプレゼンの手法やコツを伝えるコンテンツを増やし、発表のポイントを明確にした資料作成をしてもらうなど、社員が客先で行う実際のプレゼンに少しでも近づけたものをゴールと設定しました。

その発表のポイントについても、ぜひ教えてください。

・現状を把握した上で、システム化するメリットや問題点、課題をまとめる
・その仕組みを使用する場面、人物について明確にする
・システム化する上で、プログラムに必要となる項目
・開発者、利用者それぞれの目線における意見の違い

 このようなことをポイントとして掲げました。

 全体の配分として、プレゼン用にグループで話し合ってもらったり、資料づくりをしたりと、じっくりと考える時間を増やしました。私たちの仕事は、ただシステムを作るだけではなくて、お客様のニーズを明確にして、ユーザーの使いやすさ、問題を解決することがゴールです。
 結果的に、そんな“システム開発”という仕事の本質を考えてもらえる時間になったのではないかと思います。

 ちなみに指導者役の社員は、「今回のインターンシップを通して、このシステムを使う学生(=ユーザー)の率直な意見、生の声が聞けたことは、思わぬ収穫だ」と喜んでいました。

体温検知システムの体験(プラスワンAコース)
講師役を務める社員からのレクチャー(プラスワンAコース)
オンラインで講師役を務める社員
学生さんの指導には複数の社員で対応
先輩社員からのレクチャー(プラスワンBコース)
実習の運営側として、他にも工夫したことはありますか?

 オンラインでの実習はスタンダードになりつつあるといえども、学生さんも緊張しているので、細やかに声かけするなど、和やかな雰囲気づくりは常に心掛けています。

 また、いろいろな社員像を知ってもらいたいので、懇談会に出る社員・講師など、合計10人くらいと話せるようにしています。若手から中堅層を中心とし、学生さんの発表時には部長クラスにも参加してもらうなど、幅広い層と接してもらえるようにしています。

 そして、進行を講師役の社員にバトンタッチした後も学生さんが困っていないか、社員が困っていないかを見ながら、時には助け舟を出したりします。ここでも「現場に任せっきりにしない」ということに気を付けています。対面開催の場合は会場にいますし、オンラインの場合は、カメラをオフにして常駐するようにしています。

特にオンライン開催時の注意点はありますか?

 やはりオンラインで10時から17時までというのは学生さんも疲れると思いますので、1時間に1回は休憩を入れています。それから、お昼の休憩明けには当社の食堂についてなど、楽しみながら当社を知ってもらえるような話題から始めるようにしています。

 今は学生さんもオンラインでのディスカッションに慣れているので、例えば「全員が発表する場合は、自分の発言が終わったら次の人を指名する」といったルールを最初に伝えれば、その後も自発的に動いてもらえますので、進行しやすいですね。

講師の方から学生さんへのフィードバックもあるのでしょうか。

 実習最終日に発表をしてもらうので、それまで取り組んだ資料と発表資料を成果物として提出してもらっています。
 後日、指導役の社員が良いところや今後の課題などをまとめてメールでメッセージを送っています。 その資料からは、学生の取り組み具合(理解度)も分かるので、改善につながるポイントなどが見つかれば、次の回に活かしていきます。

いろいろな学生さんに出会える場として

募集時の工夫は何かしていますか?

  実習日程を決める際に、できるだけ曜日をバラバラにしています。例えば「アルバイトで特定の曜日は参加できない」といった学生さんでも調整しやすいようにという配慮からです。
 また、日程・曜日をバラバラに設定することで、同じ学生さんが1day業界研究セミナーと2days仕事体験の両方にエントリーすることも可能になります。

 ちなみに、1回の募集学生数は10人程度とすることが多いですが、最大15人程度までは受け入れられるような余裕を持ち、応募が多い場合でも、できるだけ受け入れるようにしています。

参加された学生さんの就職活動にもつながっているのでしょうか。

 実は、令和5年度に入社予定の約半数が2daysなどの実習に参加してくれた学生です。やはり当社の雰囲気を分かってくれた上で就職活動でも訪問してもらえるのは嬉しいですね。

 ちなみに、秋から冬の時期には、夏の実習参加者を対象とした「特別編」として、「人事担当者から見る企業の選び方」や「エントリーシート作成のコツ」といったテーマで、1dayオンラインセミナーを開催しています。学生同士で情報交換できる時間も設けていて、これから始まる就職活動に向けてモチベ―ションを上げてもらえればと思っています。

今後に向けた課題はありますか?

 いかに興味を持ってもらい、ファンになってもらうのかは常に考えていかないといけないと感じています。
 そして今後は、新技術開発など新しい分野の話もワクワクしながら聞いてくれるような、より専門性の高い学生にも訴求できる内容も考えていきたいところですね。

 それから、今回も痛感しましたが、現場の協力なくしては「仕事体験」はできません。いかに人事と現場が連携するか、そして、現場の社員に対応経験を積ませることが大切だと感じています。
 新入社員の頃から就職ガイダンスに同行してもらうことなどは、若手育成の一環として今後も取り組んでいきたいです。

オンライン実習(プラスワンAコース)
指導担当の社員さんとみんなでポーズ!
ハイブリッド型やオンライン開催でのインターンシップを企画しようと考えている事業所の方に、アドバイスがあればお願いします。

 まずは、「とりあえずやってみよう」という精神が必要だと思っています。
 “必ずしも上手くいくとは限らない”、”出てきた問題を一つひとつ解決してその場のベストを探す”、まさに、試行錯誤して自社なりのやり方を見つけていくことだと思います。

 私たちも、今でこそ現場の協力も得られるようになりましたが、最初は、人事担当として今できることは何か?と考えることから取り組みました。
 具体的には、社内見学ツアーのような動画を作ったりしました。そこに社員からのメッセージなども入れておけば、いつでも使うことができて便利ですよ。
 また、それとは別に、新入社員が新人研修中に制作した会社紹介動画を使う時もあります。人事担当目線とは違う観点で会社を紹介していて、働いている社員や会社の雰囲気が伝わりやすい気がします。

 その他には、当社では1年に1回「文化祭」と称して、自分の趣味や特技を持ち寄って披露する日があるのですが、そこで出てきた動画を借りたりもしています。
 かっちりとした動画ばかりでなく、そういった遊び心あふれる動画もあると、学生の緊張がほぐれていいのかなと感じています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

令和3年度の文化祭の様子