成果報告

保護猫カフェのオープン準備を通じて現代社会の課題やチームで働くことを学ぶ

  • 学校事例紹介
掲載日:2023/02/06
2022年度掲載

岐阜大学の全学共通教育科目として、1年生向けに開講されている「プロジェクト型インターンシップ」。
2022年度後期の授業では、岐阜市の一般社団法人から与えられた課題を解決するべく、チームに分かれて活動しました。
学生さんが制作した動画も公開します。

「プロジェクト型インターンシップ」

【授業の概要】
岐阜大学の全学共通教育科目 1年生向け
対象となる学部:全学部
授業のミッション:岐阜県内の企業や自治体等から課題の提示を受けて、フィールドワークや文献調査、そしてインターネットでの情報収集を行いながら、グループで解決策を検討し、実際に提案を実施する。
受講学生数:10人

今回は授業を担当する白村 直也 先生(国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 教育推進・学生支援機構)にお話を伺いました。

学生の「進める力/伝える力/考える力」を養う

まずは岐阜大学の「キャリア教育」について教えてください。

 岐阜大学では、学生一人ひとりが3つの基盤的能力――「進める力(自立的行動力)」、「伝える力(コミュニケーション力)」、そして「考える力(総合的判断力)」を修得することができるよう、キャリア教育が構築されています。また、岐阜県という地域の現状を把握し、地域の課題解決に貢献できる能力を、実践的に修得することを目指しています。 「岐阜を通じて広く世界に目を向けながら、自身の将来を切り拓いていく」――そうした学生の育成に力をいれています。

授業の狙いやスケジュールについて教えてください。

 学生には、この授業を通じて
・岐阜県が抱える社会問題について深く知ってもらいたい
・出された課題に対して能動的に取り組む姿勢を養ってほしい
と考えています。グループワークを通じた“協働”と、限られた時間の中で課題の解決や緩和のために、自分たちに何ができるかを計画的に考え、そして取り組むことができるよう、授業の進め方はもちろん、指導法も工夫しています。

 授業の流れは以下のようになっています。

1.課題に取り組むための一連の方法論について学ぶ
2.グループ活動 (就業体験①)
3.グループ活動 (就業体験②)
4.グループ活動 (課題発見①)
5.グループ活動 (課題発見②)
6.グループ活動(チームごとの発表リハーサル)
7.中間報告会(岐阜県の自治体や企業の担当者に来て頂き報告し、コメントをもらう)
8.グループ活動 (練り直し)
9.グループ活動
10.グループ活動
11.グループ活動
12.グループ活動(チームごとの発表リハーサル)
13.最終報告会(企業・自治体への最終プレゼンテーションを行い、評価してもらう)
14.全体の振り返りと自己の個性・適性を考える①
15.全体の振り返りと自己の個性・適性を考える②

全学部対象の1年生向けということで、企業・団体の内部で社員の方とともに活動するというよりは、見学や講話を通じて理解を深め、提案することが中心となっているのですね。
実習先や、学生さんへの課題についても教えてください。

事業内容:障がい者や若者、学生、女性など、働くことを希望する人へのキャリア支援等
所在地:岐阜市長住町2-7アーバンフロントビル3F

 障がい者を対象とした就労移行支援事業所「ノックス岐阜」や就労継続支援B型事業所「アリー」などを既に運営されている団体なのですが、今回は障がい者の就職支援と地域の猫の保護活動を兼ね合わせた「忍者ねこカフェ『猫影』」(運営は就労継続支援B型事業所「シャンツェ」)をオープンするにあたっての様々な準備活動が課題となりました。

 具体的には、まずInstagramやTikTokなど、若者の多くが日常的に使用しているツールを使用して多くの人に「猫影」の存在を認知してもらうこと。それから、地域の特産物を使用したカフェメニューの考案・開発です。メニュー開発にあたっては、地域の活性化や商品としてのコスト、障がいのある方が調理する手間なども考えながら、随所で「猫影らしさ」を盛り込むことも追及するという、学生にとってもかなり内容の濃いものとなりました。

学生さんは実際にどのような活動をされたのでしょうか。

 SNS担当の学生は、まず保護猫カフェ「猫影」のInstagramやTikTokのアカウント開設、プロフィール欄の作成など、SNS開設にあたっての初期準備と運営マニュアルを取りまとめました。また、プロモーションビデオと報告書を作成し、活動の過程を形として残すことにしました。

 メニュー開発担当の学生は、“地域の特産物を使用する”という課題に対して、岐阜県の特産物である「富有柿」を使ったジャムの開発と実用化を目指すことになりました。さらに「猫影らしさ」を追求しながら軽食にアレンジを加えたり、コストや手間に考慮しながら開発を進めました。

 学生がグループ活動の中で制作した動画がありますので、ぜひご覧ください。

学生さんの声(動画より要約)

SNS班の学生

 活動にはメンバー全員が熱意をもって取り組んでいて、お互いに意見が異なる時もありましたが、皆で意見を出し合い困難を乗り越えることができました。授業の最後まで、Instagramのフォロワー数増大などに力を入れていきます。

メニュー班の学生

 自分たちが考えたメニューが実際に採用されるかもしれないというプレッシャーもありますが、猫影らしさや地域性が出せるようにいろいろなアイデアを出しています。この活動の大変なところは、活動自体を毎回自分たちで考えていくところです。

より良いキャリアに向けて自分の将来を切り拓いてほしい

今回の授業の成果について教えてください。学生さんはどのようなことを学ばれたのでしょうか。

 やはり一番の成果は、周りの学生と協力しながら積極的に考え、行動する大切さを学べたことだと思います。授業は週1回ですが、グループ活動では毎回自分たちでやることを決め、話し合いを重ねていきました。

 例えばカフェメニュー考案では、アイデアのメリット・デメリットをまとめて取捨選択していく過程で、いろいろな角度から考えることの重要性を学ぶことができました。 SNSによる広報活動では、普段から自分でも使っているアプリケーションを「大衆に向けての宣伝」という普段とは大きく異なる目的で使用することの難しさを、身をもって知ることができたのかなと思います。

学生さんはまだ1年生ということですが、今後、どのように活動していってほしいと考えていますか。

 今回の経験を活かすためには、まず学んだことを忘れずに実行することが大事だと思います。どんなことでも“熟考せずに突然良いアイデアが浮かぶ”、そんなことはめったにありません。自分が思考停止状態になってしまわないよう、常にいろいろな角度から考えるようにしてほしいです。

 また、これから就職活動などにも挑戦していく中で、グループワークに取り組む機会も増えると思います。初対面のグループでもうまく進めていけるようになるには、まず他人の意見を尊重しながら、自分から積極的に参加していくことだと思います。そういう経験を自ら重ねていくことが大切です。 「効果的なSNSの使用方法」については、就職後にも活きるスキルになるのかもしれません。今後もいろいろな場面で学びを深めて、個人使用のアカウントであっても上手に活用してほしいですね。

授業で学生さんを指導される中で感じることがあれば教えてください。

 コロナ禍の中、本学の学生たちは様々な制限を受け、学業はもちろんのこと、サークル、アルバイト、ボランティア等の課外活動に対しても思う存分力を発揮することができず、時には厳しい決断をすることもありました。そんな中でも、くじけず、凹まず、創意工夫を行い、自分たちでできることを見つけ、仲間を思いやる気持ちを忘れず乗り越えてきました。

 本学は真面目で努力家の学生が多いと感じています。現在も、自分が目指す理想の就職先に辿りつくために、多くの学生が奮闘しています。より良いキャリアに向けて自分の将来を切り拓いていく、そんな姿をこれからも応援していきたいと思っています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

※忍者ねこカフェ「猫影」(岐阜市岩地2丁目20-20)は2023年2月1日にオープンされたそうです。