思いついたカリキュラムを実現するべく準備を進めること3ヵ月超。
でき上がったのは、5枚のミッションカードと72枚のアイテムカード!
初めて複数日程の受入に挑戦した㈱ハイテムのご担当者にお話を伺いました。
事業内容 : エッグファームオートメーションの設計・製造・販売
本社所在地 : 各務原市テクノプラザ2-10
今回は技術・生産グループの森さん、當眞さんにお話を伺いました。

(㈱ハイテムwebサイトより)
各務原市主催の「インターンシップ・プログラム作成セミナー」に2人で参加
森さん:昨年まで、当社では1dayのオープン・カンパニーしか開催していませんでした。時間にすると4時間程度で、午前は会社の説明と社内の見学、昼食の後にワークショップに取り組んでもらう、という内容でした。これは今年も継続して開催するのですが、「夏休み期間にできれば5日間のインターンシップを企画するべきじゃないか」と社内で相談していたところ、ちょうどセミナーの募集があったので、参加してみました。

☞memo(※1)
各務原市商工振興課・企業人材全力応援センターが企画した「インターンシップ・プログラム作成セミナー」。令和7年4月に「令和6年度の傾向分析と夏の受入準備/インターンシップ計画をブラッシュアップ!」、6月には「受入に向けた社内の総点検/学生を惹きつけるプログラムの効果的な運用」を主なテーマとして開催されました。本セミナーには、GIC事務局のコーディネーターも講師として協力しました。 なお令和8年度も同様のセミナーを計画中とのことです。
(定員に空きがあれば市外の事業者も申込可能だそうです)

森さん:いろいろありましたね。まず「どうやってカリキュラムを作っていくか」について講師が具体的な事例を挙げて紹介されていた時に、“これならうちでもできるかもしれない”と思いついたのが今年の実習の始まりでした。
當眞さん:当日は森さんの横で受講していましたが、セミナーの最中にいきなり動きが止まったので、どうしたんだろう?と思っていたら、実は実習の内容を思いついていたんだそうです。
森さん:それに、「せっかくインターンシップをやるなら、合わせて社内の若手が成長する機会にしないともったいない」というお話もあったので、若手社員に声をかけて参加してもらうのも良いなと考えていました。
「設計業務を体験させてあげないと」から「仕事の流れを知ってもらおう」への転換
では、具体的にどんな実習を作られたのか教えてください。
森さん:当社はエッグファームオートメーション、つまり卵を生産する養鶏場の機械設計・製造・販売を担っている会社です。そこで、実際の引き合い(≒価格や条件の見積もりを求める問合せ)をモデルに、どのように一つのシステムを作っていくのかを考えることをテーマとしました。
インターンシップや職場体験を計画するにあたって、以前は「実際の設計業務をやらせてあげないといけない」という想いが強かったのですが、セミナーの中で“仕事の流れを知ってもらうには”と考えたらそんな方向性の実習が思い浮かびました。「実務=設計」というイメージが強くありましたが、レイアウトを考えること自体も私たちの仕事であるのは間違いないので、これも実務体験と言えるなと自分でも納得しながら準備を進めました。
※2 機械の製造は中国の自社工場で行われています。
當眞さん:私たちは技術・生産グループに所属していて、森さんが普段から養鶏場機械の設計を担当しているからこそできた実習かもしれません。
夏休みインターンシップ募集時の内容(2025年度/GIC「実習先を探す」ページより)
「設計の力」で生産性を向上させられる?
最新の“タマゴ工場”をプロデュースせよ!
―国内シェア60%を誇る養鶏設備の専門メーカーで自分の力を試す5日間

| DAY1 | 「ハイテムについて知ろう!」 業界・企業の説明、実際の設備の見学等 |
| DAY2 | 「農場システムをレイアウトしてみよう!」 お客様からの引き合いをもとにレイアウトを考える |
| DAY3 | 「利益を生み出す仕組みを知ろう!」 技術者から実際に開発された製品の設計等について聞く |
| DAY4 | 「農場システムの設計図面を作ろう!」 学んだ内容をもとに図面を作成する |
| DAY5 | 「農場システムを提案しよう!」 自分で設計した「タマゴ工場」を先輩社員に提案する |
☞セミナーとその後のフォローの中で、GICコーディネーターからは下記のような点について意見させていただきました。
●(当初のチラシだと)「タマゴ工場」の印象が強すぎるので、もっと「設計」や「設計の力を活かす」という部分を強調してはどうか
(→設計を専攻している学生への訴求力)
●GICのwebサイトのタイトルには、業種やそこでの立ち位置がわかるキーワードも入れると伝わりやすい
(→学生が見ている画面の見映えを意識する)
●各日程のカリキュラムをミッション風にしてはどうか
例)「ハイテム説明」→「ハイテムについて知ろう!」
●機械の写真を使う場合は、実際に稼働して卵を扱っている様子に(→業界以外の人には想像しづらい)
ハイテムオリジナルのアイテムカードが誕生
森さん:準備を進める中で、当社の仕事の進め方について改めて、各担当に細かい部分を聞いて回ったんです。そうしたら、普段、設計業務をしているだけでは知らなかった裏話をたくさん聞くことができて。「農場では実際にこんな大変な作業があるんだ」とか、「農場から出荷されたタマゴってこんなところで活用されているんだ」といったことが分かって、仕事の奥深さを実感することができました。
さらに、学生さんにレイアウトを考えてもらう際の流れを想定して準備を進めていく中で、自分自身が頭を整理したかったこともあり、このようなカードができ上がりました。


72枚のアイテムカード
森さん:まず初日に業界や当社の説明をして、この実習の課題を理解してもらった後で、実際の引き合いをもとにアレンジした5つのミッションから、1つを選んでもらいます。その後は、農場や建屋のサイズ、依頼主の「10万羽飼える規模」などのオーダーを満たしながら、必須となるアイテムを項目別に選んでいきます。
項目別に1つずつ選んでいけば大まかなプランはできるのですが、選ぶアイテムによって、費用はもちろん、作業量や設置後の利益、ランニングコスト、修理が必要になる年数など様々な要因が異なります。オプションアイテムを追加すると費用は掛かりますが、その分作業が楽になったり、必要となる作業人数を減らせたりもします。
森さん:学生さんにはこのカードが一覧になったプリントを用意しました。また、何を選んで試算がどれくらいになるのかを書き込むシートも作成しました。記入すれば、そのまま営業提案できる資料にもなります。
當眞さん:カードのイラスト部分は、設計図面を使っているものもありますが、人の作業風景などは生成AIを使いました。無料で使える範囲を駆使しています。
セミナーが4月で、実習は9月に決まりましたので、それまでに間に合うかな?と言いながら細かい部分の準備をしていきました。私たちもできることは手伝いましたが、主要な部分は森さんが一人で。通常の業務もあるので、全部の準備に少なくとも3ヵ月はかかっていたと思います。
ちなみに、タイトルや内容に「設計」という言葉が入っていることから、主な対象は工学部の学生さんですか?
森さん:最初はそう考えていました。そのため、理系学生を対象としたインターンシップ説明会に出るようにしていました。ただ、そこで興味を持ってくれた学生さんが農学部の方で。大学の所在地が遠かったこともあって、実習の日程は3日間となりました。そのため、予め作った5日間のプログラムからCADを使った設計の部分を省き、レイアウトを考えて費用等を試算し、社員に発表するプログラムとしました。先に5日間のプログラムを作ったことで、そこから必要な部分を選んで調整できたのは良かったですね。
最初は”マニアックな内容のため、学生さんが来なくなってしまうんじゃないか”とか、いろいろ心配はしたのですが、偶然にもすごくハマり込んで、楽しんでくれる学生さんが来てくれました。細かい部分まで考えて発表してくれて、さらに社員が想定していなかったきめ細やかな提案もしてくれました。その学生さんのおかげで「必ずしも工学部に限定しなくても良いのかもしれない」と思えて、私たちにとっては大きな気付きとなりました。




学生の参加ハードルを下げながら、より学びの濃い日程に
参加された学生さんへのケア、支援という部分では何かされましたか?
森さん:今回は遠隔地からの参加ということで、当社の交通費手当の上限いっぱいまで適用し支給しました。また、このテクノプラザはバスの本数があまりないので、最寄りのJR蘇原駅までは送迎も対応しています。
それから、昼食は3日間とも当社で準備し、日替わりで座談会も兼ねて、毎日違った社員と一緒に食べてもらいました。ただ、全部の日程を社員と食べてもらうのが良いのか、”お昼=休憩時間”と考えるとすると、座談会をしない日も作った方が良いのかは正直、悩むところです。
當眞さん:今年の新入社員2人と一緒に食べてもらった日は、私たちも入らず、若者だけにしました。私たちとはまた違う話も出たようで、お互い生の声を聞ける良い機会になりました。
実習中は事務所の中、森さんの横のデスクで作業をしてもらいましたので、質問もしやすかったと思います。周りの社員は通常業務をそれぞれに進めていますので、普段の社員同士の会話や雰囲気も体感してもらえたと思います。
森さん:ファームのレイアウトがある程度決まってきたあたりで、実際にそのファームの設計を担当した社員と話す時間を設けたり、息抜きとして、実際使われている設備の部品の組立を体験してもらうなど、時間の使い方も工夫するようにしました。




森さん:今回、5日間の実習の形が大体できあがったので、今後は微修正を加えながら活用していきたいと考えています。また、2~3日あれば仕事の流れが体験できるプログラムとなったので、内定後、入社後の研修の中でも活用できるかもしれないと考えています。
それから、今回の受入はお1人だけでしたが、もともとは複数の学生さんがそれぞれでミッションカードを選び、相談しながら考えていくことも想定していたので、複数の学生さんに同時に参加してもらえたら良いなと思いますね。



学生さんがお1人だけの場合には、それこそ新入社員さんに一緒に入ってもらうのも良いですね。特に普段は違う業務の方であれば、他の方の仕事を知られて新鮮かもしれません。
他に、何か受入にあたって困ったことなどはありましたか?
當眞さん:学生さんが実習に来る日の朝礼で、社員には「今日はインターンシップの学生さんが来ます」と周知するのですが、実際に学生さんが来てから社員にはどうやって紹介しよう?といった点は悩みましたね。
森さん:他にも、複数日程の実習に力を入れていくためには、学生さんが宿泊を希望される場合の対応も考えておく必要があるなと感じました。
また、最終日には学生さんの発表を組み込んでいますが、短時間で仕上げることを考えると、ある程度のテンプレートを用意してあげるほうが良いのかもしれないと思っています。
それから、今回は最後に社員数名がプレゼンを聞いてフィードバックをしましたが、もっと前の段階ではどれくらいフィードバックの時間を取るべきなのか?など、学生さんの声も参考にプログラムを見直していきたいと思います。
今回、実習のスタイルが決まったことで、次年度は今年より早くから詳しい情報を公開することもできますね。
今後の展開を楽しみにしております!
本日は貴重なお話をありがとうございました。

