実習を支えているのは、受入事業所の「ただの説明会で終わらせたくない!」という熱い想い。
夏休みに向けて、ゴールデンウィーク明けから準備が始まった5daysインターンシッププログラムは、製造業の面白さを存分に体感できる内容となりました。
今回は、参加した学生さんと採用担当のお二人に、コンテンツの中身から裏側までお話を伺いました。

実習に参加した学生さん

文化創造学部 文化創造学科・デジタルアーカイブ専攻
きっかけは大学内のサークル「メタバースクラブ」
大手ナビサイトの合同説明会に参加した時にブースを訪問して、それからインターンシップに申し込みました。実はその前から、私が大学で所属しているサークルに㈱都築産業さんが関わっていらっしゃったので、名前は知っていました。
「メタバースクラブ」と言います。メタバースは仮想空間に部屋を作るようなイメージで、そこに利用者がインターネットを通じて入ることで、他の人と交流することができます。活動の中で下呂温泉の街並みや大学構内を再現したりもしていますが、他にも、企業のことを紹介する活動があって、そこに都築産業さんも参加されていました。
少しありますね。私はデジタルアーカイブ専攻に所属しています。デジタルアーカイブというのは、デジタル技術を使って、いろいろなものを記録・保存し、加工可能な状態で蓄積して、今後もずっと使えるようにしていくことです。

当社では現在DXに力を入れています。
BtoB企業という特性上、製造の現場をすべてお見せするのが難しく、学生の皆さんに会社の魅力を伝える上で、コンテンツが十分とは言えないという課題がありました。そこで「デジタル技術を活用して、もっとわかりやすく企業をPRできないか」、「メタバース空間を使って、教育コンテンツを作れないか」、そんなアイデアが社内で少しずつ形になってきました。
ちょうど今年、K.S.さんの学校の先輩が入社したこともあり、クラブとのつながりも生まれました。そういったご縁もあり、合同説明会のブースを訪れるより前に大野事業場を見学していただいたり、DX推進チームのメンバーにも直接会っていたんですよね。
製造業の工場なのに水耕栽培をやっていらっしゃると聞いて、どうしてだろう?と興味がわきました。
まだ「製造業」というものに、うすぼんやりとしたイメージしかなかったので、実際に体験してどんな業界か把握しておいたほうが良いかなとも思っていました。実際に体験してみたら、自分の想像とは結構違いましたが。
めちゃくちゃ火が出ているような工程があって、作業服は油まみれで、大きな機械で何かをガッシャーンと作っているような…そんなイメージですね。
業種によって違いもあると思いますが、ニュースなんかで流れるいわゆる「町工場」というと、そんなイメージが強いかもしれませんね。
では、事前に準備したことはありますか?
自分の学んでいることについて、ある程度答えられるようにしておこうと、メモなどを作っておきました。
実習の中身についても教えてください。まず、実習に一緒に参加したのは何人だったのですか?
3人です。全員が文系でした。
設計を起点に部品発注、組立、電気制御のプログラミングまで
1日目は一緒に参加した人たちとチームでどんなことを頑張っていくか決めたり、社内を見学させてもらったりしたのですが、午後にはCADで図面を書きました。2次元のツールは初めて使ったので、こういうふうになるんだ!と思いました。
実習日程:2025年9月1日(月)~5日(金)/5日間/9:00~17:00
| 1日目 | 羽島本社 | アイスブレイク・チームビルディング、社内見学 2D-CADで図面を作成する体験 |
| 2日目 | 羽島本社→大野事業場 | 部品発注に関する業務体験、水耕栽培の業務体験など |
| 3日目 | 大野事業場 | 組立の業務体験 |
| 4日目 | 大野事業場 | 電気設計等の業務体験 |
| 5日目 | 羽島本社 | グループワーク、5日間の振り返り、発表準備→発表 |
ちなみにどんなものを書いたのですか?
ベルトコンベアです。おそらく簡単なものだろうと思われるのですが、難しかったです。
お昼ご飯は座談会というのか交流会を開いていただいて、どんな仕事をやっているのかなどを話していただきました。ご飯も全日準備していただきました。


2日目には部品の発注の体験、3日目には設計図をもとに、ベルトコンベアを組み立てて作る体験をしました。
はい。こうなるんだ、という感じでした。さらに4日目には電気設計のプログラミング体験と、コンベアの基盤というのか、配線をつないだりしました。
CADでの設計は楽しかったのですが、組立は難しかったです。




組立と電気設計の時に、最初にCADで書いた図面についてよく理解しておくことで、その後の作業もきちんとできるんだな、ということが分かりました。
ちなみに、文系の学生さんというと、理系の方が活躍していそうな事業所だと尻込みしてしまうケースもあると思うのですが、その辺はどうでしたか?
最初はできるかなと不安だったんですが、文理不問だし、何とかなるだろうと思いました。
実習に参加してみて、事前にもう少し準備しておいた方が良かったなと感じたことはありますか?
最後の発表の時に、緊張しすぎてぐちゃぐちゃになってしまいました。
大学でも発表の機会はありますが、その時とは違って、パソコンを全く使わない発表だったこともあると思います。




発表の内容についてもぜひ教えてください。
1人ずつ、10分くらいで発表しました。テーマは「都築産業に入社してから数年経った自分が表彰されるとしたら、どんな功績で表彰されるか(を創造する)」というものです。そこには大学での学びを詰め込んで、外部への広報や、社内教育に使えるコンテンツを作った、という内容で発表しました。 20人弱を前にしての発表でしたが、「これからのDXに向けても良いテーマだね」といったコメントをいただけて良かったです。
ちなみに、実習中に気を付けていたことなどはありますか?
毎日自宅から通うのに片道1時間40分くらいかかったこともあり、朝は5時に起きるようにしていました。なので、絶対に早く寝ようと思っていました。
社会人になるにあたって、仕事の内容が重要だと思っていたのですが、通勤距離も大事なんだなということが分かりました。
グループワークをするときに、あまり積極的に動けなかったので、これからはもっと積極的になりたいと思っています。
夏休みは集中講義も多かったので、あまり他のインターンシップやオープン・カンパニーには行けませんでした。まずは、これからいろいろな企業を見てみることが大事だなと思っています。
自分のことについて、少し話せる内容を作っておくとスムーズだと思います。
私は最初、“仕事”というと、「仕事なんだから業務に関連した話題しか話しません」というイメージだったのですが、そんなことはなく、社員の皆さんの雰囲気の良さを感じることができました。
2025年度、具体的なインターンシップ計画は5月から始動
では、飯沼さんと井戸さんにもお話を伺っていきます。
今年の夏休みのインターンシップを振り返って、いかがですか。

大まかな実習スケジュールは、昨年度から大きな変更はありません。
ただ、当社では一品物の装置を製作しているため、その時期にならないと、どんな業務や装置があるのかは分からないという特性があります。とはいえ当社の強みはものづくりにあり、特に設計から組立・制御までを社内で完結できる“一貫生産体制”を持っていること。
その魅力を学生の皆さんにも実感してもらいたい、という思いは常にあります。
今年は、5月のゴールデンウィーク明けに各部署の上司が集まり、キックオフミーティングを行いました。その場で「せっかくなら、動くものを作らせてあげたいよね」という声が挙がり、設計・発注・組立・電気設計・動作テストという一連の流れを、5日間で体験できるように工夫しました。その結果、学生向けに『ミニコンベア』の教材が新たにでき上がりました。今年の実習は、実際にモノが動く体験を通じて、より深くものづくりの面白さを感じてもらえる内容になっています。

当社の強みである搬送装置、いわゆるマテハン技術を活かした「ミニコンベア」ですが、電気のソフト設計は今年4月に入社した新入社員に担当してもらいました。基礎研修を終え、部署に配属されてからわずか3ヶ月という段階でしたが、ソフト設計からタッチパネルの構築までを任せ、実際にやり遂げてもらいました。
これは新入社員教育としても非常に良い機会となったと感じています。学生の皆さんには、「入社1年目でもここまでできる」という姿を見てもらえたと思いますし、同時に「皆さんも1年半後には社会に出て活躍していくのだ」という現実を実感してもらえたのではないでしょうか。

今回のインターンシップには、人事の井戸をはじめ新入社員も関わってくれました。学生時代の気持ちを忘れずにいてほしい、という思いも込めています。
彼ら自身も感じたと思いますが、集団の中で伸びて評価される人というのは、コツコツ努力を続けられる人であり、さらに「他の人には負けたくない!」という気持ちを持てる人だと思います。新入社員にとっても、入社後のお互いの状況を知ることで良い刺激になったのではないでしょうか。
もちろん今は「自分は自分」という考え方が受け入れられる時代ですが、仕事となると自分の時間軸だけで動くわけにはいきません。
今回参加してくれた学生の皆さんにも、そうした点を意識して就職活動に望んでほしいと思います。そうすれば、社会に出た時のギャップも少し減らせるのではないでしょうか。

私自身も学生の皆さんと一緒に、勉強しながら手探りの状態でインターンシップに関わりました。その過程で、インターンシップは会社の多くの社員の協力によって成り立っているのだと改めて実感しました。学生への気配りを忘れず、社員には感謝の気持ちを伝えながら、円滑に進むようにフォローし、サポートしていくことが大切だと感じています。
この5日間を通じて、私自身もさまざまなことを学び、スキルとして身につけることができたのではないかと思います。
同時に、5日間の受入を行う大変さも改めて感じました。

昨年度は当社も「5daysで受け入れる」ことにこだわっていましたが、学生の就職活動の早期化などの状況を踏まえ、今年は5daysと2daysを選択できるようにしました。
ただ、実際に5日間参加してくれた学生のほうが会社への理解度は圧倒的に高く、解像度も高いと感じます。そう考えると、やはり5daysのほうが訴求力はありますね。さらに、夏休みという貴重な時期に5日間も当社に費やしてくれたこと自体に、大きな手ごたえを感じています。もちろん私たちの学生に対する理解度も高まり、選考や内々定後のミスマッチ防止にも一定の効果があると思います。
企業側にとっては負担も大きいですが、学生にとっても5日間参加すれば他の実習先が減ってしまう可能性はあります。それでも、お互いにそれを上回る効果があると考えています。もし「どうしようか」と悩んでいる企業があるなら、一度試してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。

井戸が配属されてから繰り返し伝えているのは、「人事部は直接利益を生み出す部署ではない。だからこそ、常に感謝の気持ちを持ってほしい。」ということです。その思いを共有し続けた結果、インターンシップの実習時には、退勤する際にその日お世話になった部署へ必ず挨拶をしてから帰るようになりました。
こうした姿勢は、ギブ&テイクの循環です。「インターンシップに協力していただいたから、今度は人材を採用し、配属という形でお返しする」という流れを、インターンシップの段階から社内で作っていくことが大切だと感じています。

インターンシップに参加したからこそ得られた学びが多くある一方で、課題も見つかったのではないかと思います。自分が思い描く未来に進んでいくためには、持っている「手札」を増やすことが大切です。ぜひ、コツコツと努力を積み重ねるひたむきさを持ってほしいと思います。
学生の皆さんを見ていると、1対1のやり取りやテキストでのコミュニケーションはしっかりできる一方で、「人と直接話す」ことが苦手な方も多いように感じます。社会人になると、突然意見を求められる場面が増えます。これこそが学生と社会人の大きな違いです。
自分の時間軸だけでなく、周囲の人と積極的に話す機会を持つことで、「異なる意見を嫌わずに受け入れる」姿勢も身につけられます。
ぜひその点を意識して取り組んでほしいと思います。

就職活動を経験して感じるのは、得られる情報は多いほど良いということです。インターンシップや説明会など、少しでも興味を持った会社や気になる会社には、積極的に足を運んでみると良いと思います。さまざまなことに関心を持ちながら、これからの就職活動に前向きに取り組んでいってほしいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!!
☞※1:「マテハン」とは?
マテリアル・ハンドリング(Material Handling)の略。原材料や部品などの「モノ」を運んだり保管・仕分け・梱包する際に発生する作業や、それを支える機器・システム全体を指す言葉です。機器にはフォークリフトやベルトコンベア、AGV(自動搬送車)、ピッキングロボットやそれらを搭載した自動倉庫など様々なものが挙げられ、工場内の自動化や省人化などに役立てられています。

